ファクタリング vs 銀行融資 どちらを選ぶべきか?

ファクタリング vs 銀行融資 どちらを選ぶべきか?

ファクタリングと銀行融資を比較し、どちらが企業にとって適切な選択肢かを分析します。両者のメリット・デメリットを具体的に示します。

ファクタリング vs 銀行融資のどちらを選ぶべきか?

ファクタリングと銀行融資を徹底比較|企業の状況別・最適な資金調達方法の選び方

 

企業が資金調達を検討する際、最も一般的な選択肢は銀行融資です。しかし、審査に時間がかかる、自社の信用力が低くて審査が通らない、といった理由で銀行融資が利用できない場面も少なくありません。

 

そうした状況で注目されるのがファクタリングです。しかし、「ファクタリングと銀行融資、どちらを選ぶべきか」という問いに対する答えは、企業の状況や資金ニーズによって大きく異なります。

 

手数料の差、審査基準の違い、資金化までのスピード、貸借対照表への影響。これらすべてを理解せずに選択すると、後から「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。

 

本記事では、ファクタリングと銀行融資を多角的に比較し、それぞれの特徴、メリット・デメリット、そしてどのような企業にどちらが適しているのかを、資金調達のプロの視点から詳しく解説します。

 

ファクタリングの特徴とメリット・デメリット

 

ファクタリングとは何か

 

ファクタリングは、企業が保有する売掛金(売掛債権)をファクタリング会社に売却し、入金期日前に現金化する資金調達方法です。融資ではなく債権の売買取引であるため、借入金として扱われません。

 

例えば、60日後に入金予定の500万円の売掛金がある場合、ファクタリングを利用すれば、手数料を差し引いた金額(手数料15%なら425万円)を即日〜数日で受け取ることができます。

 

ファクタリングの4つの主要なメリット

 

メリット1:圧倒的なスピード

ファクタリングの最大の強みは、資金調達の速さです。最短で即日、通常でも2〜3日程度で資金化が可能です。必要書類も銀行融資と比べて少なく、申込みから審査、契約、入金までのプロセスが非常にスピーディーです。

 

これは以下のような緊急の資金需要に対応できることを意味します。

 

  • 明日の仕入れ代金の支払いに間に合わせる
  • 今週中の給与支払いに対応する
  • 突発的な設備故障による修理費用を確保する
  • 急な大口受注に必要な材料費を調達する

 

メリット2:自社の信用力に依存しない審査

銀行融資では利用企業自身の信用力が審査の中心となりますが、ファクタリングでは主に売掛先(取引先)の信用力が重視されます。

 

これにより、以下のような状況の企業でも資金調達が可能になります。

 

  • 創業1年未満のスタートアップ企業
  • 前期決算が赤字だった企業
  • 債務超過に陥っている企業
  • 税金や社会保険料の滞納がある企業
  • 既存の借入金が多く、追加融資が難しい企業

 

売掛先が上場企業や大手企業、公的機関であれば、自社の決算内容に関わらず、比較的有利な条件でファクタリングを利用できる可能性が高まります。

 

メリット3:担保・保証人が不要

ファクタリングは売掛金という既に発生している債権を対象とするため、不動産や設備などの担保、あるいは代表者以外の保証人を用意する必要がありません。

 

担保となる資産を持たない企業、あるいは既存の借入で担保余力がない企業にとって、この点は大きなメリットとなります。

 

メリット4:貸借対照表への影響を最小化

ファクタリングは融資ではなく債権の売買取引であるため、貸借対照表上は「売掛金の減少」と「現金の増加」として処理されます。負債として計上されないため、以下のような財務指標への影響を避けられます。

 

  • 自己資本比率の悪化を防げる
  • 負債比率が上昇しない
  • 今後の融資審査への悪影響を最小化できる

 

ファクタリングの4つの主要なデメリット

 

デメリット1:高額な手数料負担

ファクタリングの最大のデメリットは、手数料の高さです。2社間ファクタリングで10%〜30%、3社間ファクタリングで1%〜9%程度の手数料がかかります。

 

これを年利換算すると、非常に高い金利に相当します。例えば、60日サイトの売掛金を手数料15%で現金化した場合、年利換算では約90%にもなります。銀行融資の年利1%〜3%と比較すると、その差は歴然です。

 

デメリット2:取引先との関係への影響

3社間ファクタリングでは、売掛先に債権譲渡の通知を行うため、ファクタリング利用の事実が必ず知られます。「資金繰りが厳しいのでは」と疑われたり、今後の取引に影響が出たりする可能性があります。

 

2社間ファクタリングであれば原則として売掛先に知られませんが、契約違反や支払い遅延があった場合には通知される可能性もあります。

 

デメリット3:継続利用による依存リスク

ファクタリングは売掛金を前払いで受け取る仕組みです。今月の売掛金を今月中に現金化すれば、来月の資金繰りは必然的に厳しくなります。そのため、継続利用に陥りやすく、手数料負担が恒常化するリスクがあります。

 

デメリット4:利用できる債権の制限

すべての売掛金がファクタリングの対象となるわけではありません。売掛先の信用力が低い、支払いサイトが長すぎる、債権額が小さすぎるといった理由で、利用を断られることもあります。

 

銀行融資の特徴とメリット・デメリット

 

銀行融資とは何か

 

銀行融資は、金融機関から資金を借り入れ、一定期間後に利息を付けて返済する資金調達方法です。企業の資金調達における最も基本的で、最も一般的な手段です。

 

融資には、短期融資(1年以内)、長期融資(1年以上)、証書貸付、手形貸付、当座貸越など、様々な形態があります。

 

銀行融資の4つの主要なメリット

 

メリット1:圧倒的な低コスト

銀行融資の最大のメリットは、金利の低さです。一般的に年利1%〜3%程度で資金を調達できます。信用力の高い企業であれば、1%以下の金利で借りられることもあります。

 

例えば、1,000万円を年利2%で1年間借りた場合、利息は20万円です。一方、ファクタリングで同額を手数料15%で現金化した場合、手数料は150万円にもなります。この差は非常に大きく、特に長期的・継続的に利用する場合、コスト差は企業の利益に大きく影響します。

 

メリット2:長期的な資金調達が可能

銀行融資は、数年から十数年にわたる長期の資金調達に適しています。設備投資、店舗拡大、事業買収など、大規模な投資を伴う資金需要に対応できます。

 

返済期間が長いため、月々の返済負担も分散でき、キャッシュフローへの影響を最小限に抑えられます。

 

メリット3:信用力の構築と向上

銀行融資を受け、確実に返済していくことで、企業の信用力が向上します。返済実績は信用情報として蓄積され、将来的な融資や他の金融取引において有利に働きます。

 

また、銀行との関係を構築することで、経営相談、ビジネスマッチング、専門家紹介など、資金調達以外のサポートも受けられる可能性があります。

 

メリット4:取引先への影響がない

銀行融資は企業と金融機関との間の取引であり、取引先や顧客に知られることはありません。資金調達の事実が外部に漏れないため、企業の評判や取引関係に影響を与えるリスクがありません。

 

銀行融資の4つの主要なデメリット

 

デメリット1:厳格な審査基準

銀行融資を受けるためには、企業の信用力、財務状況、事業計画、代表者の個人信用情報などが厳しく審査されます。以下のような状況の企業は、審査に通りにくくなります。

 

  • 創業して間もない(実績が少ない)
  • 直近の決算が赤字
  • 債務超過に陥っている
  • 既存の借入金の返済が遅れている
  • 税金や社会保険料の滞納がある
  • 代表者の個人信用情報に問題がある

 

デメリット2:時間がかかる

銀行融資の審査には、最低でも2週間、通常は1ヶ月程度の時間がかかります。書類の準備、面談、審査、稟議、契約手続きと、多くのステップを踏む必要があります。

 

急な資金需要、緊急の支払いには対応できないことが多く、この点がファクタリングとの最大の違いとなります。

 

デメリット3:担保や保証人が必要

銀行は融資に対して担保を要求することが多くあります。不動産、設備、在庫、売掛金などが担保の対象となります。また、代表者以外の連帯保証人を求められることもあります。

 

担保となる資産を持たない企業、あるいは既存の借入で担保余力がない企業にとって、この要件は大きなハードルとなります。

 

デメリット4:返済義務と固定的な支出

融資は借入金であるため、業績に関わらず毎月決まった金額を返済する義務があります。売上が減少しても、赤字になっても、返済は続けなければなりません。

 

この固定的な支出が、資金繰りをさらに圧迫することもあります。

 

ファクタリングと銀行融資の詳細比較表

 

比較項目 ファクタリング 銀行融資
資金調達スピード 即日〜3日程度 2週間〜1ヶ月程度
審査対象 売掛先の信用力 利用企業の信用力
コスト 10%〜30%(2社間)
1%〜9%(3社間)
年利1%〜3%程度
担保・保証人 不要(売掛金が対象) 必要な場合が多い
決算が赤字の場合 利用可能 審査が厳しい
創業間もない企業 利用しやすい 実績不足で困難
貸借対照表への影響 負債にならない 負債として計上
返済義務 なし(債権売買) あり(毎月返済)
利用できる金額 売掛金の範囲内 審査による(大きい)
資金用途 短期運転資金向き 長期投資にも対応
取引先への影響 3社間では知られる 知られない
必要書類 比較的少ない 多い

 

状況別:ファクタリングと銀行融資の選び方

 

ケース1:資金需要の緊急性による選択

 

ファクタリングを選ぶべき状況

  • 明日〜今週中に資金が必要
  • 給与支払い日が迫っている
  • 仕入れ代金の支払い期限が目前
  • 税金の納付期限が迫っている
  • 突発的な設備故障への対応

 

銀行融資を選ぶべき状況

  • 資金需要まで1ヶ月以上の余裕がある
  • 計画的な設備投資
  • 店舗拡大など中長期的な投資
  • 時間をかけて低コストで調達したい

 

ケース2:企業の信用力による選択

 

ファクタリングを選ぶべき状況

  • 創業1年未満のスタートアップ
  • 前期決算が赤字
  • 債務超過状態にある
  • 税金・社会保険料の滞納がある
  • 既存借入が多く、追加融資が難しい

 

銀行融資を選ぶべき状況

  • 業歴が長く、安定した実績がある
  • 直近3期が黒字決算
  • 自己資本比率が高い
  • 借入金の返済実績が良好
  • 税金・社会保険料の滞納がない

 

ケース3:資金の用途による選択

 

ファクタリングが適している用途

  • 短期の運転資金(1〜3ヶ月程度)
  • 季節変動への対応
  • 大口受注への一時的な対応
  • つなぎ資金の確保
  • 取引先の支払いサイトと自社の支払いサイクルのギャップを埋める

 

銀行融資が適している用途

  • 設備投資(機械、車両、ITシステムなど)
  • 店舗・事務所の拡大
  • 新規事業の立ち上げ
  • 他社の買収
  • 長期の運転資金(1年以上)

 

ケース4:コスト重視か柔軟性重視かによる選択

 

ファクタリングを選ぶべき状況

  • 高コストでも即座に資金が必要
  • 一時的な利用のみを想定
  • 柔軟性を重視(必要な時だけ利用)
  • 負債を増やしたくない

 

銀行融資を選ぶべき状況

  • コストを最優先に抑えたい
  • 長期的・継続的な資金需要
  • 返済計画を立てて計画的に利用
  • 金融機関との関係を構築したい

 

両方を併用する戦略的アプローチ

 

ファクタリングと銀行融資は、必ずしも「どちらか一方」を選ぶ必要はありません。両方を状況に応じて使い分ける、あるいは併用することで、それぞれの弱点を補完できます。

 

効果的な併用パターン

 

パターン1:銀行融資を主軸に、緊急時はファクタリング

通常の資金需要は低コストの銀行融資でまかない、突発的な資金需要や融資実行までのつなぎ資金としてファクタリングを利用する方法です。コストを抑えつつ、柔軟性も確保できます。

 

パターン2:ファクタリングで実績を作り、銀行融資に移行

創業間もない企業が、まずファクタリングで事業を軌道に乗せ、実績を積んだ後に銀行融資に切り替える方法です。段階的に資金調達コストを下げていくアプローチです。

 

パターン3:用途によって使い分ける

短期運転資金はファクタリング、設備投資は銀行融資というように、資金の用途によって使い分ける方法です。それぞれの強みを最大限に活かせます。

 

自社の状況に最適な選択を

 

ファクタリングと銀行融資は、それぞれに明確な強みと弱みがあります。どちらが優れているということはなく、企業の状況、資金需要の性質、時間的制約、許容できるコストによって、最適な選択は変わります。

 

ファクタリングを選ぶべき企業:

  • 緊急の資金需要がある
  • 銀行融資の審査が通らない、または時間がない
  • 短期的な運転資金が必要
  • 負債を増やしたくない
  • 信用力の高い売掛先を持っている

 

銀行融資を選ぶべき企業:

  • 時間的余裕があり、低コストで調達したい
  • 企業の信用力が高く、審査に通る見込みがある
  • 長期的な資金需要(設備投資など)
  • 金融機関との関係を構築したい
  • 計画的な資金調達が可能

 

重要なのは、一つの方法に固執せず、状況に応じて最適な手段を選択することです。また、両方を併用することで、それぞれの弱点を補完し、より柔軟で効率的な資金調達体制を構築できます。

 

自社の財務状況、資金需要の性質、時間的制約を冷静に分析し、それぞれの特徴を理解した上で、最も適した資金調達方法を選択してください。